MatrixAnalysis

  【編著者】
  豊田秀樹・編著 (2011年9月)
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  朝倉書店 本書webページ

  【執筆者】
  尾崎幸謙,室橋弘人,中村健太郎,川端一光,福中公輔,
  岩間徳兼,久保沙織,鈴川由美,池原一哉
  阿部昌利,大橋洸太郎,秋山隆,大久保治信

本書は,James, R. Schottによって2005年に Wiley Series in Probability and Statistics から著された Matrix Analysis for Statistics の第2版の全訳である。 線形代数は理科系の学部の初年度に必修で開講されることが多く,数学の中では人口に膾炙する学習内容である。それは線形代数が多くの理科系の学問分野で重要な役割を果たしているからである。もちろん統計学も例外ではなく,多変数の内容を学習しようとすると線形代数の知識は必須のものとなる。ところが中級レベル以上の学習をしようとすると,一般的な教科書で解説されている線形代数の内容だけでは十分ではない。統計学ではできあがっている線形代数を利用して記述されているばかりではなく,統計学の記述をするために進歩した線形代数の領域があるためである。編訳者らが原著の全訳に着手したのは,中級レベル以上の統計学を学習するための線形代数を解説した日本語の教科書が十分用意されているとはいえない現状を鑑みたためである。
    原著は456頁の教科書であるが,500問を超える回答のない練習問題が章末に用意されていた。我々は本文の翻訳に1年,練習問題の略解に1年費やしたので,そのために翻訳期間は倍になってしまった。我々が略解の作成を試みた理由は,もちろん略解があった方が,教科書として使用した場合に便利さが断然増すと考えたからであるが,そればかりでなく略解を通じた内容自体が学術的記述として優れていると感じたからである。さらに略解の作成は,訳者の原著に対する理解を深め,結果として,略解作成以前よりも読みやすい翻訳文になったという副産物もあったように思う。
我が国における多変量統計の学習に,本書がほんの少しでも寄与できることを,訳者一同とともに切に願って筆を置くものである。(本書まえがきより)

  目次
   まえがき
第1章 線形代数の基礎
第2章 ベクトル空間
第3章 固有値と固有ベクトル
第4章 行列の因数分解と行列ノルム
第5章 一般逆行列
第6章 連立線形方程式
第7章 分割行列
第8章 特別な行列と行列の演算
第9章 行列の微分と関連事項
第10章 2次形式と統計学の関わり