IRT中級編

  【編著者】
   豊田秀樹・編著 (2013年10月)
   朝倉書店

【執筆者】
  尾崎幸謙,室橋弘人,齋藤朗宏,中村健太郎,川端一光,福中公輔
  岩間徳兼,鈴川由美,久保沙織,池原一哉,
  大橋洸太郎,秋山 隆


 

 項目反応理論(IRT, item response theory)は、テストの作成・実施・評価、そして総合的なテスト事業の展開において非常に有効な数理モデルです。現在、ヨーロッパ・アメリカ・中国・韓国・台湾・オーストラリアをはじめ、多くの国におけるテストの運用場面で利用されています。近年わが国においても、理論的な研究だけでなく、実践的・応用的な利用が急速に増加し、IRTの有用性が高く認識されるようになってきました。

 本書は、姉妹書の「入門編」や、その他の入門書を読み、IRTの初歩的知識をお持ちの方を対象に、実践・応用場面で利用できる手法・話題について分かりやすく紹介いたします。言うなれば初めの1歩のその次を紹介することを目的としています。意味を重視した解説と具体的な分析例・数値例を中心にして知識のステップアップを図ります。

 実践の便宜に供するために、Rによって本書の全編を学習できるようにしました。朝倉書店の本書のwebページからデータとスクリプトを入手し、脇にコンピュータを置いて、追計算しながら学習を進めてください。しかし本書の中では、ソフトウェアの使い方の説明は一切しません。ソフトウェアの変化は速いし、IRTの理論的・実践的中身とソフトウェアとは分けて学んだほうが良いからです。Rの基本的な解説書は、すでに多数出版されています。またIRTにおける意味を了解しているならば、パッケージ中の関数の意味は明快です。いきなりパッケージのマニュアルを精読することはお勧めいたしません。まずはスクリプトを実行し、その出力と本書の図表とを照らし合わせることにより、容易に引数の意味を了解することができるからです。

 一昔前ならば、新しい手法が存在することは知っていても、ソフトウェアがなかったり高価だったりして、実践につなげることは、なかなか難しいものでした。姉妹書の「事例編」や「理論編」を執筆する際には、高価なソフトウェアを購入したり、スクリプトを書いたりしました。それと比較して本書はオープンソースRからの恩恵を十二分に享受して執筆することができました。 関係諸氏に、この場を借りて深謝いたします。(本書まえがきより)



目次
1 ラッシュモデルと多値ラッシュモデル
2 ラッシュモデルの拡張モデル
3 多次元項目反応モデル
4 多値データのための多次元項目反応モデル
5 特異項目機能 (DIF) -IRTに基づく方法-
6 特異項目機能 (DIF) -IRTに基づかない方法-
7 混合ラッシュモデル
8 多値反応モデルや多次元反応モデルにおける等化
9 連続反応モデル
10 適応型テスト
11 モッケン尺度分析
12 カーネル平滑化による密度推定
13 マルチレベルIRTモデル