秋山隆(Takashi AKIYAMA) |
博士論文 |
博士学位論文 |
「項目特性図作成方法の精緻化による項目分析の新たな展開」 |
項目分析はテストを構成し,実施,運用するために欠かすことのできない作業工程である。項目分析の重要性、項目の正答比率や,選択肢の振る舞いの分析の重要性は様々な研究において指摘されてきた。 項目分析を行うことで,テスト運用者は,当該項目が測るべき事柄を適切に,どれだけの精度で測ることができているのかを確認することが可能となる。 多肢選択式項目は,主として細目積み上げ方式のテストにおいて採用される項目形式である。 多肢選択式項目は,出題内容について,用意された複数の選択肢の内から正答となる選択肢を回答することを受験者に対して求める。 第1章では,項目分析 (item analysis) について概説した後に,本稿を通じて扱っていく項目特性図 (item characteristic chart) を用いた項目分析の方法と情報量規準について概説した。 第2章から第5章までは、項目特性図を用いた分析方法における改善点を取り上げ、第4章では、第5章において用いられるベイズ統計学の方法について概説した。 第2章では、項目特性図作成の際に必要となる、群数決定方法の恣意性についての改善方法を提案した。 項目特性図の作成時に受験者を群に分ける際,群数の値を決定するための明確な基準は知られていない。現状では分析者によって経験的に決定されており,一般的には5群とされるが,その根拠は明確には示されていない。 本研究では、群数分割をモデルと見なし、各群数で分割した際の項目特性図に関して情報量規準を算出する方法について提案を行い、ミュレーション結果と適用例を示した。 第3章では項目特性図を用いた誤答分析における、仮説検証の方法に関する研究成果を記述した。 選ばれ易かった誤答選択肢が存在した場合,その理由を考察することで,受験者の更なる学習の発展に繋げることが期待できる。 しかし,選択肢数が増えると,特性曲線は互いに重なり合い,視認性が失われてしまう。 このとき,同様の方略,知識によって導かれる複数の誤答選択肢が存在している場合に,それらをまとめることが考えられる。 この状況において,その妥当性が確認可能であれば,教科内容についての更なる理解の促進が期待できるであろう。 しかし,作成した項目特性図を解釈することは可能であっても,そこから得られた知見に基づいて仮説を構成し,それについて検証する方法は未だ確立されていない。 本研究では、誤答分析を通じて得られた仮説ごとに情報量規準を算出する方法について提案し、シミュレーションと適用例を通じて有用性の検証を行った。 第5章ではブックレット式テストにおける共通項目の項目特性図に関する研究成果を報告した。 テストの実施方法の1つとして,ブックレット方式による項目の出題が挙げられる。 ブックレット方式は多くの受験者を対象とする場合,同一日時,場所でテストを実施することが困難であるような状況において,有用な実施方法である。 項目群は複数のブックレットに分割され,各ブックレットが,各受験者集団に割り当てられることなる。このとき,後の分析において比較可能となるように,ブックレット間で共通の項目を含ませておく。 つまり,共通項目については含まれるブックレットの数だけ項目特性図を作成することが可能となる。 例え同一項目であっても,項目特性図の表現はブックレット間で異なる場合がある。このとき,共通項目の項目特性を表現する項目特性図として,何れを採用して項目分析を行うべきか,基準は広く知られていない。 本研究では、ベイジアンベータ-2項階層モデルを用いて、共通項目に対する複数の項目特性図について統一的な観点から項目特性図を作成する方法を提案した。 第6章では,本論文を通じて行ってきた研究全体に関する総合考察を行った。本論文では3つの研究を通じて、項目特性図に関する群数選択の規準や、仮説検証方法、統合的な特性図の作成方法を論じてきた。しかしながらこれらの方法は状況に応じて組み合わせて適用することも考えられ,より柔軟に項目特性図を用いた項目分析を行う状況において役立つことが期待される。 |
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Last update: 20160105 |